スタッフ
病院猫キズくん闘病記①
当院の初代病院猫であるキズくん(推定4歳)は、病院に来た若かりし頃から慢性的な口内炎に悩まされてきました。これは猫の歯肉口内炎と呼ばれ、歯肉および口腔粘膜に原因不明の炎症が持続し、猫さんの生活の質(Quality of Life: QOL)を低下させるとても厄介な病気です。キズくんはここ半年で時折硬いドライフードを嫌がり、強く開口する(アクビのような)行動を避け、食欲が減退して口臭も強くなってきていました。
猫の歯肉口内炎では歯石除去等の歯科処置によって一時的に症状が軽快する例がいるため、歯に付着するウイルスや細菌、さらには宿主の過剰な免疫反応を原因とする説もありますが、詳細な発生機序はよく分かっていません。治療はステロイド剤のような炎症反応を抑制する薬剤が一定の緩和効果を示しますが、症状が激しい例では薬剤の効果が不十分となって長期的なQOLを維持した管理が難しくなるケースが散見されます。キズくんもそんな典型的な経過を辿っており、最近では薬剤の効果が明らかに減弱してきていました。
猫の歯肉口内炎は前述の通り歯が病態形成に重要な役割を担っていると考えられているため、抜歯処置が症状の改善をもたらす可能性が指摘されています。上下犬歯より奥の歯全てを抜歯する「全臼歯抜歯」による症状の改善率は60%程度と報告されていることから、我々はキズくんの辛い症状を緩和させることを目的に全臼歯抜歯を実施することにしました。手術は12月末頃を予定しており、結果はここで追って報告していきます。永久歯の抜歯は猫さんへの侵襲性が高く(術後しばらくは痛みが出やすい)、処置時間もかかる大変な手術です。年始には元気な姿で復活していると思います。
