終末期獣医療
今回はグっと仕事寄りの話を。
過去のブログでも触れた通り、私は終末期獣医療を探求してきた自身の経験から、治癒を目指さない病気について考える時間が多い獣医師人生を歩んできました。ちなみに「終末期獣医療」という言葉は約12年前に私が作った造語で、「病気による死を迎える時間を扱う獣医療」という意味で使ったことが始まりです。終末期を扱う獣医師には、対象となる犬猫さんが本当に治癒困難な状況かどうかを見極める総合的且つ合理的な診断能力が求められます。加えて、その判断について相手が理解しやすい言葉を選んで説明する表現能力も重要な資質だと考えます。
その疾患は治癒しない、ということを生前に証明することは誰にもできません。しかし我々は獣医学の知見に自身の経験を融合させて導き出した「その疾患の治癒は極めて困難であろう」という予測意見を飼い主様へお伝えする立場にあり、その重い責任を自覚して一つ一つの言葉を選ばなければなりません。終末期獣医療には人の感情が深く関わるために、飼い主様と獣医師間で認識の齟齬をきたしやすい場面が多く、獣医師側の説明不足と飼い主様側の認識違いが蓄積した結果として両者のコミュニケーションが持続しなくなるケースは少なくありません。そのため、終末期獣医療では病状の経過に沿って獣医師と飼い主様がお互いの認識を擦り合わせる相談やディスカッションが大切であり、それらは終末期をより受容しやすいプロセスにしていくために欠かせない共同作業であると考えます。明確なゴールが見えない中でどう最期を迎えていくか?はご家族にとってとても辛い選択ですが、過ごした最期の時間を良い記憶として留めていただく、そんな終末期獣医療を目標にして当院はその手法を探求していきます。
また、終末期獣医療をより良い形に作り上げるためには、獣医師のみの努力には限界があります。当院では動物看護師や事務員も含めて目標を共有し、常に前向きに問題の改善策を協議していけるチーム医療体制の構築を目指しています。