保護主参加型入院管理

当院には時々、「猫を保護したけど何とかならないか?」という相談が寄せられます。依頼主様にとっては善意に基づく行動でも、そこには動物病院なら最終的に何とかしてくれるのではないか?という期待があるように感じることもあります。
少なくとも、当院は動物を保護する場所にはなり得ません。猫を保護した場合であっても、扱いは原則として入院になります。そして通常の入院とは異なり、屋外の猫はどのような感染症を保有しているか分からないので一般の猫さんとは隔離した管理をしなければなりません。マンパワーも消耗品も通常より多く必要になります。治療費は依頼主様への全額請求となるため、猫さんの状態が悪い場合は10日間の入院下集中治療で10万円近い請求が発生することもあります。それでも人の介助なしに猫さんが再び外で生きていけるという保証はありません。さらに、地域のことを考えれば猫の数を今以上に増やさないために不妊手術をしておくことが望ましく、保護した猫が猫エイズ・白血病ウイルスのような不治の感染症に罹患している場合も少なくありません。ウイルス感染はその後の譲渡の可能性を著しく下げる要因になります。保護した後に待つ責任を、御自身はどこまで負う覚悟がおありでしょうか。
外で猫を見つけた場合は、上記のような現実が突然立ちはだかる可能性を考えた上で病院にはお連れください。命を大切にするという気持ちは尊いものですが、重い負担を損だと感じてしまう人は、残酷なようでも保護しない方が良いと思います。最後は他人に丸投げするという意識は非常に無責任な考え方だと私は思います。
とは言え、このような事例は今後も後を絶たないでしょう。そこで、当院では新しい試みとして保護主参加型の入院管理というものを試行しています。これは文字通り、保護猫の入院管理の一部を保護した方に院内で行っていただき、入院費を減額するというものです。その主な目的は保護猫の管理の大変さと喜びを知っていただき、命を大切にするという漠然とした概念について個々でその意味を再考してもらうためです。それを体験した方の中には将来、野良猫の数を増やさないために考え、行動してくれる人が現れるかもしれません。すぐに結果は出なくても長期的な視点で人の意識を変化させることができれば、動物を取り巻く社会環境は少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
現在のところ、参加型入院管理では次世代の方の体験を重視し、お子様がいらっしゃるご家庭に限定して提案させていただいております。入院管理にはお子様(15歳以下の方ならどなたでも可、実子に限りません)の参加を条件とし、入院費や期間、処置内容は事前に担当医と協議して決定します。入院管理は原則1日1回、処置には当院の動物看護師が立ち会い、安全には十分配慮いたします。