薬剤の個人輸入について
アトピー性皮膚炎や心臓病、代謝性疾患など長期の治療が想定される疾患の治療薬には比較的高価なものが含まれるため、重い経済的負担を伴う場合があります。飼い主様の中には個人輸入を利用して、病院で処方された薬と同等のものを安価に購入される方もいらっしゃいます。薬事法における規制を受ける薬剤は国の承認・許可を得ていない者が販売・譲渡目的で購入することはできませんが、個人的な使用を目的とした場合に限り、海外薬の個人輸入(代行業者は仲介のみで、製品は海外から直接届きます)が認められています。
近年、インターネットを中心とした個人輸入代行業者の仲介によって海外から安価な薬が入手可能になっています。個人輸入には薬の流通や品質の信頼性を担保し難いという問題に加え、使用に関して自己責任の域を脱さないという点に注意が必要です。特に後者については飼い主様が自己判断で行っている治療とみなされるため、獣医師の管理から外れた治療と法的に解釈される可能性があります。また、海外薬は日本国内と規制が異なるため、製剤の品質管理は大丈夫なのか?粗悪な製品が紛れ込む可能性はないのか?信頼できる業者を判別する方法は?動物医療保険が使えない場合が多いといった様々な問題を内包すると考えられます。しかし、合法的な選択肢が存在する以上は消費者の自由が保障されることは社会のルールでもあります。
私はここで個人輸入の是非を問いたいのではなく、海外薬の使用については、できれば事前に主治医とよく相談していただきたいということです。飼い主主導の治療になってしまう懸念から否定的な考えを持つ獣医師は少なくないですが、疾患や状態に合わせた定期検査の頻度などは話し合っておかなければいけません。私は飼い主様の選択肢がある以上は個人輸入を声高に否定する意図はなく、生じるリスクを考慮した選択ができていることが重要だと考えます。また、生命維持に関わる薬の場合は緊急時(突然輸入が止まってしまったなど)を考慮したストック(1~1.5ヶ月分ほど)も合わせて確保しておくことをお勧めします。
以上、治療を目的とした薬剤の個人輸入については、主治医と事前に相談できる関係を構築し、互いに方針を確認しておいた方が良いと考えます。お忘れなきよう、飼い主様も我々も真の目的は同じです。